外交的思索への誘い

東京大学法学部大学院教授、小原雅博。国際政治や日本外交について綴る。

トランプ時代の世界を考える

 トランプ新政権の「不確実性」に世界が揺れる中、日米首脳会談では揺るぎない日米同盟が確認されました。それは、日本の生存と安全という死活的国益に留まらず、パワー・バランスの変化するアジアの安定にとってもタイムリーで効果的なインパクトを持つものとなったと言えます。

 また、トランプ大統領は、安倍総理と「非常に相性がいい」と述べましたが、日米首脳間の親密な関係はそれ自体がアジアにおいては戦略的メッセージとなり、したたかな首脳外交として評価することもできるでしょう。

 しかし、世界の指導者の中では安倍総理は格別な存在かもしれません。トランプ大統領は、隣国のメキシコ大統領に「奴ら(不法移民)を取り締まらなければ軍隊を送る」と脅したり、同盟国の豪州首相には「最悪の電話会談だ」と言って予定の半分もしないで打ち切ったりして、その激しい性格を世界に印象付けています。

 2月のギャラップの世論調査では、回答したアメリカ人の67%が「世界の指導者はトランプ大統領に敬意を抱いていない」と答えています。2009年に就任したオバマ大統領については、逆に67%が「世界の指導者に敬意を持たれている」と答えていたので、大変な違いです。

 世界秩序を支えてきた超大国アメリカの第45代大統領となった型破りの人物は、アメリカをどう変え、世界をどう変えるのでしょうか?

 既に多くの議論がなされ、「リベラル秩序の崩壊」、「パックス・アメリカーナ(アメリカによる平和)の終焉」、「米中新冷戦」といった見解も発表されています。

 本ブログは、そうした議論も踏まえ、「トランプ時代」を迎えたアメリカと世界はどう変化していくのか、アジアを中心とする外交問題から民主主義の危機や反グローバリズムなど政治や経済の問題まで取り上げて、世界の行方を展望してみたいと思います。